マニラはアジアの電力プレミアムを払い続けるのか
容量市場の幻影と、ねじれた資本コスト。メラルコ料金の上振れを三つの数字で読み解く。
この記事の主張
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- 2024年以降のメラルコ料金上振れの約3割は、燃料費・為替・利用率では説明できない残差である。
- Roughly 30% of Meralco's post-2024 tariff overshoot cannot be explained by fuel cost, FX, or utilisation — it is a residual.
- 容量メカニズムが未整備な国では、IPP の WACC に 1.5〜2.5pt のリスクプレミアムが上乗せされている。
- In jurisdictions without a working capacity mechanism, IPPs price in a 1.5–2.5pt risk premium on their WACC.
- フィリピンの追加発電容量の70%が2030年までにPPA満了。再交渉時にプレミアムが反映される。
- 70% of Philippine incremental generation capacity hits PPA expiry by 2030; renewal terms will re-price the premium.
メラルコ住宅用バンドル料金は、2026年4月時点で PHP 14.35 / kWh。 2020年8月の PHP 8.49 から、5年8ヶ月で +69%。 バンドル全体でこれだけ上昇しているが、その内側を分解すると、発電スライス単独で +91% に達する。
数字を見ると一見、上昇は一様に進んだように見える。だが請求書を構成要素ごとに分解すると、動いたのはほぼ発電の 1 カラムのみであることが分かる [1]。送電・配電・税は、5 年間でほとんど動いていない。
実質的に動いたのは 1 つだけ
2020 年から 2026 年にかけて、バンドルの非・発電レイヤー(送電・配電・税)は合計でも数センタボしか動かなかった。発電だけが PHP 3.99 / kWh 上昇し、その単一カラムが +69% 全体を担っている。
残差 3 割の正体は、燃料費・為替で説明されないこの発電内部のリスクプレミアム — つまり 容量メカニズム不在のしわ寄せ である [1][3]。
ここで重要なのは、発電内部の「説明できない部分」が、規制が空白を残している領域とほぼ一致するという観察だ。容量市場が未整備な国では、IPP は契約価格にリスクプレミアムを織り込む。そのプレミアムが、最終的にバンドルの「発電」スライスに着地する。
構造の空白は、誰かのバランスシートに着地する。フィリピンでは、それが家庭の電気料金に着地している。
屋根上ソーラーは 2024 年にグリッドの下をくぐった
ルソン島の産業需要家向け behind-the-meter ソーラー LCOE は、メラルコの発電チャージを下回り、構造的ドライバーが上向きに作用する中でさらに低下を続けている。クロスオーバーはすでに発生しており、ギャップは年々広がっている [3]。
産業スケールでは、behind-the-meter ソーラーはグリッド発電チャージの およそ半額 に着地し、契約期間中の単価は PHP 建てで固定される。これは家庭ではなく、まず工場が静かに脱グリッドしていく構造を作る。
戦争はトリガー。構造が物語。
ウクライナ侵攻と Malampaya 枯渇は、たしかにメラルコ料金を押し上げた。だが本誌の関心はトリガーの方ではない。なぜ同じトリガーが、隣国よりもフィリピンの請求書に大きく転写されるのか — その差分の方だ。
差分は制度設計、より具体的には 容量メカニズムの空白 に着地している。2030 年に向けて PPA 満了の波が来る。再交渉のたびに、空白の代価は再び家庭に転写される [2]。
それは記事一本では閉じない問いだが、まずここから書き始める。